3500万円が貯まるまで㉘「働け、ニート。追い詰められる無職」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は国民的オンラインゲームドラクエ10にハマったことを切っ掛けに無気力を脱したのはいいものの今度はゲームが辞められなくなり……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
働け、ニート。追い詰められる無職
「おい、クソチビ。いい加減にしろよな💢」
これは深夜0時を超えてもドラクエを続けたかった私がテレビの音量を0にしてゲームをしていた時、急にすぱーんとリビングの引き戸が開いて現れたルームメイトで元恋人のIさんに言われたセリフです。
(は? このおっさん、今クソチビって言った?)
出会った頃の甲斐甲斐しさは一体どこへ行ったのでしょう? 釣った魚にエサをやらないどころか今やクソチビ呼ばわりです。他にも、いろいろ言われましたね。
「邪魔だ。ねずみ色(グレーのスウェットを一日中着ていたので)」
「そのゲームソフト俺が買ってきたやつだから、返してくれない?」
「働け、ニート」
現在は気ままな一人暮らしセミリタイアなので自由を好きなだけ謳歌できていますが、同居人がいるとたとえ生活費を折半にしていてもこの言われようです。「セミリタイアしたけど家族からのプレッシャーが……」という話を聞くと大いに共感してしまいます。
無気力状態から意識を取り戻したとはいえもう少し英気を養いたかった……もといドラクエがしたくて仕方が無かった私は一計を案じます。
かくなるうえは、Iさんをオンラインゲームの沼に沈めることにしました。
※物騒な意味ではありません。
かくなるうえは……沼に沈めよう
もともとオタク用語で特定のジャンルや作品にハマることを「沼落ちする」という表現があるのですが、そこから転じてまだその作品にハマっていない人をファンに仕立て上げることを「沼に沈める」と言うようです。このまま小言を言われ続けるのは嫌だと思った私は、なけなしの貯金の中から7万円を投じてIさんをドラクエXプレイヤーに育てることにしました。
「ゲームソフト返してって言ってたよね? 随分長く借りていたし、ただ返すだけじゃ悪いから利子として新品のWiiとテレビもつけとくね~^^」
そう言って半ば強引にリビングに2代目のWiiとテレビを持ち込んだ私を眉間にしわを寄せて見ていたIさんでしたが数週間後には、
「いい加減にしないと、Wiiたたき割るぞ💢」
|・ω・`)「今日はまだドラクエやらないの……?」
の状態まで変化させることに成功します。
具体的にIさんがどういう変遷を辿ってドラクエ沼に落ちていったのか、これはこれで思い出深くて面白いエピソードがたくさんあるのですが、ほぼゲームの話になってしまうのでここでは割愛します。
しかしながら、私がドラクエ以外のことをしていると向こうから誘いに来るようになった時は「この投資、勝ったな」と確信しました。
誤解しないでください!
誤解のないように言っておきたいのですが、私は普段から誰彼構わず他人様を沼に沈めるようなことをしているわけではありません。一つの作品やジャンルにハマると言うことはその人にとってかけがえのない時間やお金を投じることになるわけですから、いわば禁じ手として迂闊に手は出さないようにしてきました。それが時間泥棒のオンラインゲームともなればなおさらです。ですがあの時はわくわく快適ドラクエライフを守るための選択肢が限られており、致し方なかったのです(同棲解消して一人暮らしするには収入が不安だったし)。
もちろん、反省はしております。
もともとアウトドア派だった健全な30代男性が、手間とお金をかけてカスタマイズしたマウンテンバイクでサイクリングしたり、バイク仲間とツーリングに行ったり、キャンプ場でうぇいうぇいバーベキューした写真をフェイスブックに投稿したりすることもなく、平日は帰宅してから深夜まで休日は文字通り朝から晩まで自宅に引きこもってオンラインゲームするようになってしまったことに対して申し訳なさを感じていないと言ったら嘘になります。
ある天気の良い晴れた休日のことです。窓の外の日差しに目を奪われていたIさんが言いました。
「晴天の祝日だというのに朝から着替えもせず、外にも出かけない。デリバリーでファストフード頼んで、30代のいい若いもんが引きこもってオンラインゲーム三昧(ざんまい)か……ただれきってるな」
Iさんはかつてねずみ色と皮肉った私と同じスウェット姿のままコントローラーを握っている自分に気づいて自嘲するように吐き捨てました。無理もありません。その日は本当に外出しがいのありそうな小春日和だったので我に返ったのでしょう。彼の心情を慮って私は相槌を打ちました。
「そうだね……。もし、今目の前にドラクエにハマる前の自分に戻れるボタンがあったら、押す?」
Iさんは3秒ほどなんとも言えない苦悶の表情を浮かべた後、静かに言いました。
「……ソレハ嫌ダ」
反省はしています。反省はしていますが、後悔はしていません。
我ながらいい仕事したなと思います。
人生はどこで何が役に立つかわからない
一応メリットも書いておくと、当時のドラクエXは交流ツールでもありました。
ある日、仕事から帰ってきたIさんが「今から営業部長がグレン一丁目に来る。すぐ準備して!(※グレンはドラクエ内の街の名前)」と言うなりスーパー接待タイムに駆り出されたことも一度や二度ではありません。
営業部の社員やその上司である課長や部長までもがドラクエXプレイヤーだったらしく、よく私とIさんを含む4人パーティーを組んで一緒にストーリーを攻略したりレベル上げしながらおしゃべりしていました。「一体いつ寝てるんだろう?」と思うほどの廃プレイヤーの方もおりましたね……。
部長や課長はそこまで熱心にやっていたわけではなかったのですが、どちらも小学生のお子さんと一緒に遊んでいて「子供の攻略を手伝って欲しい」という文脈でご一緒することが多かったです。
次の目的地に向かう道中で、
「ヤモリちゃん(職場では苗字にちゃん付けで呼ばれてました)はA社やめた後、今何してるの?」
と聞かれることもありました。
つかの間の人生の夏休みを楽しんでいますとかなんとか言っていたら、
「ふうん。暇なら戻ってきたらいいのに」
「機会があったらお願いしますw」
という会話をすることもあって、その時は社交辞令で言ってくれているんだな~っと思っていました。この一年後くらいに実際に辞めた会社に出戻ることになるとはまさか予期していませんでしたね。人生、何がどこで影響してくるか本当にわからないものです。
次回に続きます。
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(オタクから不用意に趣味を取り上げようとすると返り討ちに遭うことがあるので注意しましょう)
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
関連リンク
3500万円が貯まるまで㉗「無職ニートとドラクエX」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はクビになった後、何がいけなかったか考えるも答えは得られず気力を失って抜け殻のようになり……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで㉖「生き方マニュアルが見つからない」
Iさんが見兼ねてゲームソフトを買ってきた
仕事から帰ってくると暗闇の中に朝出かけた時に見たのと同じ姿勢のままの私がいるのを見て、「こいつヤベェ」と思ったらしいルームメイトのIさんが買ってきたものがあります。
ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンラインのゲームソフトです。
「それ、話題になってたから買ってきたよ」
そう言ってIさんはWii版パッケージをリビングテーブルの上に置きました。
ドラゴンクエストと言えばいわずと知れた国民的ゲームタイトルで、2021年の東京オリンピックのオープニングミュージックで採用された記憶も新しいでしょう。ゲーマーやオタクじゃなくてもプレイしたことのある人は多いはずです。そのナンバリングタイトル(スピンオフや派生ではない正当な続編)で初のオンラインゲームということもあり、当時かなり話題になっていたのを覚えています。
発売されたばかりのそれは行列を作らないと買えないほどでしたが、Iさん自身はゲーム好きというほどではないものの話題になっているものや入手困難なものがあればとりあえず手に入れてみる性分なので、買ってきたことが特に不思議とは思いませんでした。
しかし、その時の私は「そう……」と言ったままそれ以上その話題に触れることはありませんでした。
「俺はやる時間ないから代わりにやってみて」
次の日もその次の日も、相変わらずソファーの上で身動きもせずにいたと思います。独りでいる間、お昼ご飯をちゃんと食べていたかどうかもよく覚えていません。ただ、朝起きて寝間着を着替えて夜になったらまた着替えて寝るだけの生活です。ドラクエのパッケージもリビングのテーブルの上に置かれたままでした。
3日目の夕食を食べている時、Iさんが再びゲームの話題を出しました。
「それ、やらないの? せっかく買ってきたのに」
「……? 自分でやるために買ってきたんじゃないの?」
「……俺はやる時間ないから、暇だったらプレイしてみてよ。 面白かったら感想教えて」
「ん……わかった……」
ここにきてIさんがパッケージを買ってきたのは私のためだったのかもしれないなと思い至りましたが、心は空っぽのままで感情も動きませんでした。ただ買い物とか洗濯みたいに頼まれたからやらなくちゃと思っただけで、翌日パッケージのセロファンをはがすときも機械的に仕事をこなすような手つきでした。
ドラクエXはオンラインゲームではありますが最初のチュートリアルはオフライン(普通の据え置き型ゲームと同じ一人プレイ)です。一通りの操作や世界観を理解しながらポチポチボタンを押しているうちに、数時間ほどで「続きはオンラインで」となります。Iさんにそれを伝えると「オンラインもやってみたら?」と言われて回線をつないでみることにしました。
オンラインのサーバーにつながるとそこは別世界でした。
発売日からまだ間もないスタート地点の初期村にはたくさんのプレイヤーたちがひしめいていて、興奮冷めやらぬ様子でチャットをにぎわせています。
「こんにちは!」
「パーティー組みませんか?」
「ありがとう!」
「こんにちは!」
「こんにちは!」
これらはあらかじめ登録されている定型文でボタン一つで発言できるのを試し操作で連打されているだけだったのですが、私はなぜか自分が話しかけられていると思って慌てました(笑)。
「え? 待って? みんな、落ち着いて? ちょ、これどうやって返信するの?!」
不意打ちを食らって、どこか遠くに行ってしまっていた心が急に現実に引き戻されたような感覚でした。あるいは、発売を心待ちにしていたであろうゲームのプレイヤー同士がひとところに集まってお祭り騒ぎをするその熱気にあてられたのかもしれません。
いずれにせよ、その時を境目に私は急速にドラクエXの世界にはまり込んでいくことになります。
無職ニートにオンラインゲームをやらせると起こること
陽の気にあてられて久しぶりに「楽しい気持ち」を取り戻したのはいいのですが、困ったことも起こりました。今度はゲームが辞められなくなったのです。
ドラクエXは間違いなく面白いゲームでしたし、そこに仕事を辞めたばかりの無職ニートがジョインするというだけでも恐ろしい組み合わせなのに、私は一度のめり込むと他のことが考えられなくなる性格(過去記参照)です。無気力な生活が一転して、寝るかご飯食べるかドラクエするかになっていきました。正確にはドラクエしながらご飯を食べていたので寝るかドラクエするかですね。
すると最初は私のドラクエ報告をほっと安堵した様子で聞いていたIさんも、深夜になってもコントローラーを離さない私にしびれを切らして言いました。
「おい、クソチビ。いい加減にしろよな」
次回に続きます。
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(私のゲーム人生はテイルズオブデスティニーから始まりました)
あとがき
前回の3500万円が貯まるまで㉖「生き方マニュアルが見つからない」では数々のコメントをいただきありがとうございました。
当時の私の気持ちに寄り添ってくださった方が多くて、何年も前のことながら傷が癒される思いでした。また、正直な感想を寄せてくれた方もありがとうございます。どの意見もそれぞれ頷けるもので、コメント欄が一つの意見だけに染まらないのは健全性が保たれている証拠だと思い安堵しています。
このあたりのエピソードを書くにあたり言語化するのが難しく何度も書き直すのですがうまく伝えられているかどうかわかりません。私自身の文章力のなさも相まってあまりスッキリしていない人も多いかと思いますが、例のあの仕事とは後ほどもう一度向かい合って決着をつけることになります。今しばらく進行をお待ち下さい。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで㉖「生き方マニュアルが見つからない」
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3500万円が貯まるまで㉖「生き方マニュアルが見つからない」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はパワハラに猛抗議したら派遣終了(クビ)を言い渡されたところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで㉕「パワハラに猛抗議するがクビを言い渡される」
あの時、どこで選択を間違えたのか?
事実上のクビを言い渡された私は、次の派遣先を探す気力もないくらい意気消沈していました。
正直、大恩があるはずの職場に対して不信感を持っていました。
当時、最初の顔合わせで対応してくれた女性社員のRさんはもう他部署に異動していて不在でしたが、同席していた課長は私がパワハラに対して強い拒否反応を示すことは知っていたはずでした。それなのに異動先の状況も分かった上であえて私を後任にしたはなぜだったのでしょうか?
また、課長から派遣終了を言い渡されるときの理由は『所属しているチームが解散したから』でした。しかし、それはパワハラ社員さんの件がなかったとしてもすでに閉鎖が決定していたのはIさんから聞いた通りです。つまり、私を辞めさせたいから異動させたわけです。
退職後、ハローワークに行ったら退職理由が自己都合扱いになっていたことも不信感に拍車をかけました(ハロワの人が確認してくれてすぐ会社都合に訂正されました)。
心当たりならありました。例の文章チェックのことで、私が空気を読まずに規定にそってNGを出したり、忖度することを非難したりしていたからそれがうざがられたのではないか……。さらにはあれしきのことでパワハラだと騒ぎ立てたりしたから……。
本当のところはわかりませんが、様々な思いが去来していきました。
私のしたことは間違いだった?
あの時、空気を読めないのが良くなかった?
あの程度のことでパワハラなんて騒ぐべきじゃなかった?
私が大人になり切れていないから、未熟だから不正解だったの?
どこからどこまでが間違ってた?
じゃあ、どうするのが正解だった……?
生き方マニュアルが見つからない
あの頃の私は世の中には唯一不変の正しい生き方があるという妄想を持っていました。ここまで読んできた読者の中には、すでに私の持つメンタルの弱さや不器用さには薄々お気づきの方もいるかと思います。巧妙に隠そうとはしていますが、私は元来まわりの空気を読んで行動するのが苦手な人間です。グレーゾーンがなく、白か黒か、0か1かでものごとを考えがちな理屈っぽい性格だったため、度々こんなことを思っていました。
器用に生きられる人はどこかでみんな「正しい生き方マニュアル」をもらえている。
多分、私はそれをもらい損ねた。
もらえなかったものはしょうがないのでどうにかしてそれを探し出そうとするのですが、どんなにあがいても一向にそれは見つかりません。正しさの教典がなければまた間違いを犯してしまう。正しく生きられない私は罪人のような気持ちで日々を過ごすことになり、常に自分がみんなと同じように正しく振舞えているのかどうかビクビクしながら周囲の視線を気にしていました。そうして、ひとたび誰かに✖(バツ)をつけられると激しく動揺して「もう生きてはいけない」と嘆くのです。
そういう危うい思考回路の持ち主でした。
二度目の無職
二度目の無職になった私は、もうあがくことにも探すことにも疲れてしまって何も考えたくなくなりました。
朝から晩まで同じソファーにもたれかかって抜け殻のように過ごしました。テレビもつけず、身動きもせず、瞬きも忘れそうなくらいなにもしないまま黙って座っていました。時折、目から涙が流れてきても拭うことさえしません。何もしたく無かったんです。
夜になって帰ってきたIさんが明かりもつけずに朝見た時と同じ姿勢のままソファーにいる私を見てビビったのか、間もなくしてあるものを買ってきました。
次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
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3500万円が貯まるまで㉕「パワハラに猛抗議するがクビを言い渡される」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は寿退社する人の後任で引継ぎ中に異動先の不穏な空気を感じ……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで㉔「納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも」
パワハラのお手本のような人
異動先のリーダーは密室となった会議室で机を拳で殴りつけて言いました。
「だから、なんで目標が達成できないんだって聞いてんだよ!!」
「言われた通りにやってたらできてないはずねーだろうって言ってんだよ💢」
ドスの効いた声で営業目標の未達を報告した社員2名に暴言を浴びせています。
二人は特に驚くでもなく淡々と報告を繰り返しますが、リーダー社員はずっと先ほどの調子で怒り狂っているので堂々巡りになり、営業含め黙るメンバーにひたすらリーダーが圧をかけ続けるだけの構図になりました。1時間のはずの会議は2時間が過ぎても終わる気配がありません。
あまりにもパワハラのお手本のような光景に、私は「え?は?え?」と混乱しながらじっと待つしかありませんでした。
やっと解放されたのち、すぐにIさんにメールを送りました。
「リーダー社員さんのことで聞きたいことがあるんだけど、今日何時に帰れる?」
Iさんの証言
当時Iさんとの仲はすでに破局を迎えていたものの同棲を始めてしまったこともあり、再び引っ越すには貯金が心もとなかった私はルームシェアのような形でIさんとの同居を続けていました。カップルと言うよりはルームメイトのような関係です。
一人で家にいたい私と、何かと夜遅くまで帰ってこないIさんの生活は普通にしていたら顔を合わせることもないので、事情を聴くため私はIさんに帰宅時間を確認し、今日目の前で起こったことについて聞くことにしました。
「今日のあれ……なに? どういうこと?」
「……いつものことだよ」
私は今日まさにリーダー社員に暴言をぶつけられていたIさん自身に尋ねました。
「なんであんな机を殴りつけたりしてるの? あんなのどう見てもパワハラじゃない」
「今日のはまだマシな方。O君(もう一人の営業担当)なんか前に頭めがけてペットボトル投げつけられたこともあるし……ああいう人なんだよ」
「なんで止めさせないの? 絶対おかしいでしょ!」
「課長も知ってることだよ。さすがに女性には手は出してこないと思うけど」
確かに私には暴言やら圧が飛んでくることはありませんでした。
ですが、「だからいい」なんて思えません。あの空間にいるだけでフラッシュバックが起きそうになるのを必死に耐えていた私は、この先も同じ状況で仕事をするなんて到底耐えられることではありませんでした。
猛抗議! その後、サービスは撤退が決まり私もクビに……
次の日、すぐさま派遣会社のコーディーネーターさんに連絡を取って、事の次第を話しました。
定例会議でリーダー社員が机を拳で殴りながら圧をかけること、1時間のはずの会議が平気で2時間以上に伸びることなど、私自身に対してのパワハラでないにしてもこのような会議に参加しなければならないこと自体がハラスメントであり、到底耐えられるものではないと猛抗議しました。リーダー……いえ、パワハラ社員さんと同じ会議に出る仕事は一切したく無いと訴えました。
私の抗議は派遣会社を通して課長に伝わり、課長から私以外のチームメンバーにもヒアリング。結果、不適切な対応の事実が認められたため、パワハラ社員さんには厳重注意となりました。一応、パワハラ社員さんからは「なんかごめんね💦」的な謝られ方をしましたが、私の警戒心は解けませんでした。その後もいやいや定例会議に参加して仕事を続けていましたが、その後一か月ほどでパワハラ社員さんが退職したと聞かされます。
Iさんから聞くところによれば以前から決まっていた退職らしいのですが、有給消化もなく最終出社日の次の日には転職先の会社に出社したようです。しかし、事件はこれだけでは終わりませんでした。
どうやらパワハラ社員さんが会社に申告していたのとは違うお金の使い方をしていたらしく、新規サービスは即時閉鎖が決定。予算帳簿を管理していた私も事情聴取を受けることになりました。
懐に入れたわけではないので横領とかではないのですが、サービスの実績を実際よりもよく見せるために本来許可されていた以上のお金を勝手に使っていたようです。その請求書がパワハラ社員さんの退職後に続々届き慌てて調査が入ったようで……。
私は予算管理を担当してはいましたが、実際の予算額は毎月パワハラ社員さんに聞いて数値を入れていました。それは会社側もわかっていたようで、話を聞かれはしましたが特に私が疑われていたわけではなかったです。念のためのヒアリングだったらしくその後も特に何か聞かれたりはありませんでした。
サービス自体ももともと成績が芳しくないことから内々には半年以内の撤退が決まっていたようなのですが、予定を前倒しての閉鎖となったようです(この辺はほぼIさん情報です)。
そして、サービスの撤退とともに私も課長直々に派遣期間終了を申し渡されました。事実上のクビです。私が異動してからおよそ二か月後のできごとでした。
次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
次回:3500万円が貯まるまで㉖「生き方マニュアルが見つからない」
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3500万円が貯まるまで㉔「納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は担当することになったのは嘘の更新情報とクレーム発生装置の温床となる機能に関わる仕事で……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
真面目に仕事するほど損をする
新しい派遣先での仕事はサイトに更新される店舗オーナーからの入稿文章をチェックすること。けれども、入稿されるものの大半は何か月も同じ文章です。毎日2~3時間を費やして語尾の一文字を変えただけの文章をチェックし続けるという生産性の無さは、かつての仕事で感じた穴を掘ってはまた埋める拷問に近い辛さがありました(参照:3500万円が貯まるまで⑫「まるで拷問のよう」)。20代の貴重な時間が特に何の価値も生み出さない作業にあてられているのではないかと考えると行き場のない焦燥感を感じたのを覚えています。
一方で、限りなくグレーに近い黒を責め続ける店舗オーナーのクレームもあります。規定に合わせて真面目にチェックしているからNGを出しているのに、その結果得られるものは営業担当からの嫌味と、クライアントに忖度して消費者の安全を無視したアウトプットという目の前の現実……これはかなり屈辱的なことでした。
営業からはもちろん上長からも空気を読むことを暗に要求されていると感じました。真面目に仕事に取り組もうとすればするほど回りから嫌われていく。この仕事を好きな人は私を含めて誰もいませんでした……。
納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも
ですが、私はどうしても納得がいきませんでした。
わざわざ何時間もかけて文章をチェックするのは消費者の不利益になるようなことをサイトに載せないためです。普段、消費者のことを第一に考えたサービスづくりを事業理念に掲げていて、年に数回の研修でもそれを繰り返し確認しています。なのに、研修から戻ってきた午後には声の大きいクライアントに忖度して規定違反の文章をサイトに掲載しています。
「言っていることとやっていることが違いますよね?」
そう言って、募ったイライラを実際に上長や社員の人にぶつけてしまうこともありました。でも、これは間違いだったと思います。
私がイライラをぶつけたところで、ぶつけられた人がそれを解決できる何かを持っているわけではありません。ただ、私が鬱憤を晴らしたいという欲望が一瞬満たされるのと引き換えにやるせない思いを抱える人を増やすだけなら、それもまた生産性のない行いでした。
だけど、当時はまだそんなことに気が回るほど視野も広くなくて、自分を諫(いさ)めることもできませんでした。
異動先の引継ぎで感じた違和感の正体
そんな日々を過ごしていた数か月後、別の部署へ異動することになりました。
といっても同じ事業部内の新規サービス立ち上げ的なチームへの異動だったので、仕事内容は変わりますが所属そのものはあまり変わらずデスクも同じ島の目と鼻の先です。
そこは5人ほどのチームで、統括するリーダー役の男性社員1名、営業の男性社員が2名、営業事務と帳簿などを管理する庶務的な役割の女性社員が2名いました。このうち庶務的な役割をしていた人が結婚して寿退社することになり、その引継ぎで私が入ることになりました。
引継いだのはエクセルで作られた予算管理シートの更新など帳票類の管理ですが、予算額自体はリーダー社員からトップダウンで降りくくる指示をそのまま反映するので新人の私でも難なくできそうでした。異動の結果、文章チェックと言う嫌いな仕事から逃れられて少なからずほっとしていた部分がなかったと言ったら噓になります。
引継ぎ元の女性社員とは顔見知りだったので、引継ぎも雑談を交えながら和やかに進んでいきました。
「寿退社さんっ。聞きましたよ~、次期社長夫人になられるそうですね!お相手の方ってどんな人なんですか?😊」
「いやいや、小さな自社工場の経営だし私も事務員として働く身だよ~。次期社長っていっても普通のおじさんだし、全然優雅な生活じゃないからw ヤモリちゃんだってIさんとそろそろそういう話してるんじゃないの?」
「いや~……うちはもうそういう関係じゃなくなっているのでないと思います😅」
「またまたあ」
なんて話をしながらも、寿退社さんは嬉しそうに顔をほころばせていました。まさに幸せいっぱいの新婚さんという感じでこちらまでほっこりしてきます。
その寿退社さんの顔が急に神妙になった気がしました。
「ヤモリちゃんはIさんがいるから大丈夫だと思うけど……なにか困ったことがあったら周りに相談してね……」
「……? はい」
何か含みがあるような言い方でしたが、セリフだけ見れば引継ぎの時の決まり文句のようでしたしこの時は特に気にも留めていませんでした。
その意味するところを知ったのは、引継ぎを終えて寿退社さんもいなくなった後の最初の定例会議です。
ガンッ
……っと盛大な音を立ててリーダー社員は机を殴りつけました。
会議室という密室の中で起こった出来事に私が感じていたのは混乱と戦慄でした。
次回に続きます。
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前回:3500万円が貯まるまで㉕「パワハラに猛抗議するがクビを言い渡される」
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3500万円が貯まるまで㉓「胸糞が悪くなる仕事」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は派遣社員として働き始めた職場では好きな仕事と嫌いな仕事があって、嫌いな仕事の方は多大なトラウマとその後の正社員登用への布石となっていく……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
胸糞が悪くなる仕事
前回も触れた通りいろいろな意味で思い出深いその仕事ですが、一言でいうと胸糞が悪くなるようなタスクでした。フェイクを入れながら説明すると楽天やアマゾンのようなECサイトを思い浮かべてもらうのがわかりやすいかと思います。
仮に私の派遣先をA社とすると、A社は楽天やアマゾンのように多数の店舗が出店するインターネット上のショッピングモールを運営するのが事業内容でした。出展したい店舗を募って出展料を取る代わりに、店舗のお客さんになってくれそうな人を集めてくるのがサービス内容です。
このサイトには出展中の店舗オーナーが一日一回、数行程度の更新情報をサイトに載せられる仕組みがありました。「本日セール開催中!」とか「商品がテレビで紹介されました!」とかそういうことを最新情報として宣伝できるわけです。更新情報があるとその店舗は【NEW】のアイコンとともにサイトの目立つ位置に表示されるのでよりお客さんが来やすくなるという寸法です。
一見いい機能に見えるのですが、これには落とし穴がありました。
嘘の更新情報
まず第一に、更新情報が嘘の更新情報になってしまったことです。
例えば、「商品がテレビで紹介されました!」を次の日は「商品がテレビで紹介されました。」に変えるだけで、システムは新しい情報が入稿されたと判断してしまうため、末尾だけを1文字変えて文章を使いまわすということが横行しました。「目立つ位置に表示されてお客さんを集めたい、でも毎日新しいニュースを考えるのは面倒だ」と思ったのでしょう。一店舗そういうことを始めるとすぐにほかの店舗も真似し始めて、あっという間に更新情報には使いまわしの定型文が【NEW】の文字とともに並ぶことになりました。消費者の立場から見れば何のメリットもないですし機能として意図した使い方にはなっていないことは店舗オーナーもわかっていたことだと思いますが、これがまかり通る以上自分だけが真面目に毎日違う文章を考えようとはしなくなるのが当然です。
結果的に、サイト上には何か月も使いまわされた偽の更新情報がはびこるようになります。
クレーム発生装置
第二に、これはクレーム発生装置になりました。
更新情報のテキストはフリー入力ですが、もちろんそこには書いてはいけない事の決まりもあってサイト上に表示させる前に社内のチェックがありました。
20個ほどあった決まりは特に変わったものではなく、
- 特定の人物や店舗、業界などを貶めることは書けません。
- 消費者の誤解を招く表現や事実確認のない実績は書けません。
などの一般的にごくごく当たり前の内容です。
このルールはもちろん店舗側にもマニュアルとして配られていて、「社内チェックで規定違反が見つかった場合は差し戻しになるので後日もう一度入稿してください」と案内されていました。
しかし、この規定を意地でも守らない店舗がありました。仮にX店とします。
X店は他の多くの店と違って第一の問題に上げたような文章の使い回しはしませんでした。それは大変いいことなのですが、そのかわり毎日気合を入れて考えた文章が差し戻されると非常に高い温度感で苦情を申し立てたのです。
X店の悔しい気持ちも分かりますが、「100%絶対に治るニキビ薬!」とか、「タピオカはもう時代遅れ!今来てるのはバナナジュース!」みたいなことをほぼ毎回書いてくるのに、OKを出すわけにはいきません。
実績数値については根拠数字の書類を提出させているわけでもないのだからもうちょっともっともらしい数値をかけばいいのに、100%なんて書いたら見た瞬間に嘘ってわかっちゃうじゃないですか。バナナジュースにしても、わざわざタピオカを落とす必要あります? 自店舗の製品をアピールしたいならその良いところだけを書けばいいのに、X店は他店舗や商品を貶める表現をやめようとはしませんでした。
今すぐ責任者が謝りに来い!
X店的には「これのどこが違反してるって言うんだ!」と納得いかない様子です。こちらとしてもできるだけNGは出したくないので、精一杯好意的に解釈して限りなく黒に近いグレーは大目にみたり、NGの時も「タピオカはもう時代遅れ!」の部分だけ取り下げて欲しいとか、「100%治る!」は載せられないけど数字を修正してくれたらあとは大丈夫ですとか、いろいろ代替案や修正案まで添えて差し戻しの通知を送るのですが、X店はその度に営業担当を呼びつけて「今すぐ責任者が謝りに来い!」と凄まじいクレームを浴びせました。
こんなことがしょっちゅう起こるので、私ともう一人の文章チェックの担当者もほとほと困っていました。
しかしながら、当時X店はモールの中でも中堅程度の取引額があり、超大口と言うわけではないにしてもここを落とすと事業の売り上げ目標達成が困難になることが予想されました。それゆえ、高度に政治的な判断(皮肉です)から、X店からクレームがついた時はNGのはずの入稿内容をOKとして通してしまうということが行われることもあったのです。
……差し戻したはずの「100%治るニキビ薬!」の文言がサイトに表示された時の私の気持ち、想像できます?
次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
次回:3500万円が貯まるまで㉔「納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも」
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3500万円が貯まるまで㉒「好きな仕事、嫌いな仕事」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はIさんとの出会いの中で自分を偽らない生き方を夢見るというところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
久しぶりなのでご挨拶
少し時間が空きましたが、また昔話の続きです。
正直、このあたりの話からはほぼセミリタイア直前まで働いていた会社での出来事になるのでどこまで書いていいのか悩ましいのですが、出てくる取引先や登場人物は今はもう取引がなかったり退職していたりで直接的な関わりが無くなっているのでフェイク多めで書いてみようと思います。
抽象的なふわっとした言い方が増えて、記憶自体が薄れているところも多いのでわかりにくさは出ると思いますが、できるだけ補足しつつ少しづつ書いていくので気長にお付き合い下さい。
このままとんとん拍子で正社員……にはなりません
私は「3500万円が貯まるまで⑯「思いがけない返事」」でこの会社で派遣→契約→正社員になると書いていましたが、最初から社員登用が予定されていたわけではありませんでした。紹介予定派遣でもない、普通の派遣社員です。自分でもまだ未来がどうなるか全く予期していませんでしたが、紆余曲折を経てこの後契約社員になります。
ところで、このブログの古い読者の方であれば「あれ?」と思った人もいると思います。なぜなら、私は過去記事で「年単位のNEET期間が二回ある」と書いているからです。つまり、この後もう一回無職になります。まずはその顛末を書いていきます。
好きな仕事、嫌いな仕事
この会社では、自分に合っている仕事と嫌いな仕事の両方がありました。
合っている方の仕事は、エクセルを使った集計業務や、HTMLのコーディングの手直しなどです。
※エクセル……Microsoft社の表計算ソフト。数字の集計だけでなく、文字列を切ったりつないだりの編集にも役立つ。
※HTML……WEBページを作るためコンピュータ用の言語。<h1>~</h1>とか<a href="https://www.yamorishiki.com/">ヤモリ式</a>とか。
もちろん未経験での採用ですので、私自身最初はまともに使える関数も少なかったです。しかし、エクセル自体は全世界で広く使われているツールですしグーグル先生に聞けばいくらでも知りたい情報は手に入ります。関数と言うものの存在を知ったことで、「世の中には便利なものがあるんだな」と思って、お昼休みのラスト10分や業務が予定よりも早く終わった時の合間時間などを使って、新しい関数やショートカットを少しずつ覚えていきました。
HTMLも独学ではありましたが、学生時代にJavaScript(ジャバスクリプト)を使って趣味でゲームを作ろうとした(挫折しました)ことがあって多少は心得がありました。作業自体は単純で社員の人から渡されたり自分で用意したURLをクリック可能なテキストリンクや画像リンクに加工する、あるいはパラメータを付けて所定のHTMLの中に組みこむくらいのものです。一つ一つ手コピペでの作業を指示されていましたが、エクセルで関数を組んでリンクの一覧を貼り付けるだけで加工後のHTMLが完成するようにしました。アウトプットさえ正しければ作業工程まで見せる必要はないので、やり方は勝手に変えていきました。当時、派遣社員は私だけで他に同じような軽作業を依頼されている契約社員が数名いましたが、こういったことをしているのは私だけだったので作業効率は飛躍的に伸びていくことになります。
なによりも、一人で黙々と出来るこの仕事は私の性分にあっていました。職場のメンバーは和気あいあいと雑談しながら仕事するタイプの人が多かったのですが、私はもともとおしゃべりは得意ではなくマルチタスクでもないので、仕事をする時は黙って仕事だけに没頭します。最初にアウトプットの条件を明確にしてもらえれば後は自席に引きこもって作業できるのはありがたい限りでした。
そして、嫌いな仕事の方です。
それは私に多大なトラウマを形成するとともに今の仕事観を決定づけ、さらには未来の正社員登用への布石にもなった決して忘れることのできないものでした。
続きます。
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セミリタイア資金3500万円が貯まるまで㉑「自分の好きなものを一生好きでい続けたい」※思い切り予告と違うタイトルでごめんなさい!!
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はIさんとアニメ映画を見たことで距離が縮まった矢先、Iさんは自分のSNSに魔法少女の画像を投下してしまい……というところまででした。その続きです。
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二度目の告白
その後も、Iさんと公園でバドミントンをしたり、通販で買ったという魔法少女のフィギュアにつられたりしながらデートを重ね、江の島?かどこかの海沿いの道でもう一度告白されました。
「自分も30歳を過ぎたし、次に付き合う人とは結婚するつもりでいる。だから結婚を前提に真剣な付き合いをして欲しい」
当初、彼とはあまり接点がなかったために遊びでちょっかいを出されているんだろうと思っていましたが、ここまで聞かされればつまみ食いでないことは私にも十分わかりました。
私は彼をドン引かせようと思ってアニメオタクやメンタルヘルスをカミングアウトしたけれども、結局そのことを一番恥ずかしいと思っていたのは自分自身だという事にそろそろ気づかなければいけない時が近づいてきていました。
元カレにも言えなかったこと
もともと職場ではTさんというムードメーカーの女性がアニメを見ることを公言していたこともあって、そこにIさんという二人目も現れ職場でオタク趣味について隠さなければいけない空気感はなくなってきていました。それでも私がなかなか自分の趣味について話すことができずにいたのは、元カレとのことがあったからかもしれません。
元カレとは学生時代から新卒の頃にかけて通算8年ほど付き合っていました。彼には本当に大事にしてもらったし今も感謝しかない私にとってとても偉大な人ですが、それでも私がアニメを見ることは言えないでいました。
彼に内緒でこっそり視聴していたところを目撃された際に、
「え……そういうの見るんだ」
明らかに曇った彼の表情を察知して、咄嗟に「なんとなく気になって再生してしまっただけ。別に見たかったわけじゃない」風を装ってしまった時から、この先も自分はこの趣味を隠しながら生きなければならないんだろうなと感じていました。
地元にいた時から共通の趣味を持つ友達以外には大っぴらにせず隠してきましたし、私の趣味を知る親からも言われたようにもう大人になる年なのだからいい加減子供っぽい趣味は卒業しなければならない。そう思ったこともありました。
実際に大学生になった私は一度はアニメを見ることもライトノベル(アニメキャラクター風の登場人物がでてくる小説)を読むことも辞めた時期がありました。代わりに月9とかのまわりからおかしく思われなさそうなドラマをみて一般人のように振舞っていました。地元に帰った時のオタク友達に「今はもうそういうの見てないから」と言ってアニメの話を拒否したことも。そうやって、社会に受け入れられる自分に作り替えていこうとしました。
でも、ある時たまたま手に取ってしまった『涼宮ハルヒの憂鬱』というライトノベルを読んで「卒業なんてない」と悟ったんです。
私の身体は頭のてっぺんからつま先まで全部この世界を愛していて、大人になったからといって知らんふりしながら生きていくことはできない。そう感じました。
なら、隠さなければ。
生きるためには、仕事をして給与をもらっていくためには社会の一員でなければならない。その間私は自分の趣味をひた隠しにしなければならない。
それを当然のこととして受け入れながらこれまで生きてきて、Iさんの自分を偽らない言動を半信半疑で見ていたんです。一挙手一投足が想定外で、緊張と不安をもって見ていたその生き方はいつしか強い憧れへと変わっていきました。
もう、Iさんとの交際を断る理由なんて一つも残っていませんでした。
私はとっくにIさんに惚れていたし、彼のそばにいられたら私もそんな生き方ができるんじゃないか。そう期待している自分がいました。
自分の好きなものを一生好きでい続けたい
このあと私はIさんとの交際をスタートさせますが、最初にお話ししたように1年足らずで破局を迎えます。今はいろいろあって元戦友のような友達づきあいをさせてもらっています。
もう一度やり直したいとは思わないし、別れたことを後悔したりもしていません。その時自分にできるベストを尽くしてそうなったならしょうがないと思っています。
ただこの時の私にはまだ自分で主体的に自分を変えていこうと思えるほどの強さはなくて、どちらかと言うと彼に変えてもらおうとしたことが別れの遠因だったと考えるとあるいは別の結末もあったのかもしれないなと思います。
いや、でも二人とも自己主張強いし、金銭感覚も違いすぎるから多分無理ですね😅
お互いに近づきすぎず遠すぎない今の距離感が一番合っているような気がします。
しかしながら「自分を偽らない人生を生きたい。好きなものを一生好きと言い続けられる生き方がしたい」、私の中に芽生えたその思いはより自由な人生を求めてセミリタイアという未来につながっていくことになります。
次回に続きます。
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久しぶりのあとがき
余談ですが、交際後にどうしても不思議でIさんに聞いてみたことがあります。
「最初、全然接点なんてなかったのによく告白する気になったね?」と言ったら「何を聞かれているのかわからない」みたいな顔になったので、
「ほら、4,5回くらいしか話したことなかったじゃない」と続けたら、
「……十分でしょ?」と真顔で言われました。
「あ、この人一回でも話したことがあればみんな友達って言っちゃうタイプの人か」ってようやく合点がいきました。
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3500万円が貯まるまで⑳「Iさんと魔法少女」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はIさんからの告白を華麗にかわしたと思ったらいつのまにか次のデートのアポを取られていた。何を言っているのかわからないと思いますが私も何をされたのかわからない…というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
Iさんと魔法少女
Iさんが営業歴10年であることを思い出した私は、ようやく昨日の敗因を分析できるようになっていました。おそらくIさんにとっては私の浅知恵など手管のうちにも入らず、なんならトラップを仕掛けられたことさえ気づかず一回戦目の白星をあげたのかもしれません。
不覚にも私の調査不足だったようですが、それでもバドミントンの約束は一か月以上先の日程を指定することができました。その間再び作戦を練り直そうとしたその矢先、Iさんが映画のチケットを二枚持ってきて朗らかに言いました。
「これ、今すごく人気があるみたいなので行きませんか?」
それは劇場版 魔法少女まどか☆マギカのチケットでした。
思わず行きますと即答してしまった私を誰が責められるでしょうか?いや、責められるはずがない。(反語)
アニメ好きの方には説明するまでもないと思いますが、言わずと知れたアニメ界の名作です。すでに確立された様式美を持っていた魔法少女モノに新境地を開いたエポックメイキング的な作品であり、子供向けファンタジーを装ったSFとしても見ごたえがありました。かわいらしいキャラクターデザインなのに、度肝を抜かれるストーリー展開に夢中になった人は当時も今も大勢いることでしょう。今にして思うとアニメを「これから勉強」するような人の選択としてはチョイスが絶妙すぎて、誰かオブザーバーがいたのでは?と疑ってしまうほどです。
もちろん、映画もすっごく良かったです。
あ、でも初見で見るならテレビシリーズから入った方がいいですよ。まずは3話まで見ましょう。話はそれからです。
ティロ・フィナーレ
「映画、面白かったですね^^」
「もう、めちゃくちゃよかったです!」
思わず映画館を後にする時の会話にも華が咲いていました。もう細かいことはいろいろと置いといて楽しかったです。
こんな風にアニメの話ができるなんて地元を離れて以来何年かぶりでしたし、わかりやすいくらい興奮してはしゃいでいた気がします。正直、Iさんが「アニメの勉強をする」と言った時はその場限りのリップサービスくらいにしか思っていませんでしたが、こんな風に秘密の趣味を共有しあえるならこの人と付き合うのも案外ありなんじゃないかと思い始めていたことは否めません。
Iさんはおもむろにスマホを取り出してなにか操作を始めました。
フェイスブックの画面が見えたのでSNSで通知でも来たのかな?と思って横目で見ていると、Iさんは投稿したばかりのその画面を私にも見せてくれました。
=========================
ティロフィナーレ~✨
TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』より引用
=========================
Iさんは魔法少女(マミさん)の画像とともに、作中の決め台詞を自分のSNSに投下していました。
い や 、 ア ン タ 何 し て ん だ 。
Iさんの予想もつかない行動に言葉も出ませんでした。
確かにオタクバレを一時は覚悟してカミングアウトしていましたが、私が予期していたのはこういうことでなかった気がします。
ホラー映画の続きを見るような気持で画面を眺めていたらすぐにコメントが付き始めました。
=========================
- これなに?アニメ? かわいい~
- Iさん、何してんすかwwwwwwwww
- Iさんってアニメみる人だったんですね。 早く言ってくださいよ笑
=========================
「まどマギの映画見に来た😄アニメの面白いタイトルがあったら紹介して下さい」とIさんが返信するとまたすぐにオススメ作品の数々が寄せられてきて、にぎやかな通知音が鳴り響きました。
この後何の会話をしたかあまり覚えていませんが、帰ってからもSNSのことを思って私の心臓はキリキリと痛かったです。
翌週、出社すると週末にIさんとアニメ映画を見に行ったことは、当然みんなの知るところとなっていました。
Tさん「I君、昨日フェイスブック見たよー? アニメ見るならそう言ってよね。私オススメいっぱいあるんだから」
Oさん「昨日、フェイスブックに画像上げてましたね。魔法少女まどか☆マギカの」
Rさん「まほうしょうじょ……?」
Oさん「Rさん、まどか☆マギカです。魔法少女まどか☆マギカ」
Tさん「Oちゃんも見るの? まどマギ面白いよねー!」
Oさん「僕、こう見えてアニメ詳しいですよ」
Rさん「そういうのが今流行ってるんですか……? 私も見てみようかしら」
※Rさんは私の顔合わせの面接をした女性社員で非オタです。
職場で魔法少女という単語を連呼されることにライフがガリガリ削られていくのは私だけという状況にますます混乱していた次第です。
次回、『元カレにも言えなかったこと』。
続きます。
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(次でアニメネタが終わりますので非オタの皆様もう少し耐えてください)
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
次回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで㉑「自分の好きなものを一生好きでい続けたい」※思い切り予告と違うタイトルでごめんなさい!!
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3500万円が貯まるまで⑲「告白させたのち断る」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はなぜか職場の人が結託してある男性とくっつけようとしてくるので、元凶のIさんとサシで話をすることにしたところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
Iさんと食事の日がやってきました
私は最初から告白させたのち断るつもりで食事に臨みました。何も気づいていないような素振りで適度に会話を盛り上げつつ「これはいけるだろう」と相手に思わせました。
酷いと思うかもしれませんが、それは承知の上です。前回記事のコメント欄で書いて下さった方もいますが、職場でIさんが周りの人に協力を求めたことにより私は完全にアウェー(敵地。自分にとって居づらい雰囲気)でした。
本人は無邪気に頼んだだけかもしれませんが、仕事をするうえで交際を断りずらい状況に追い込むのは一歩間違えばセクハラにもなりかねません。もしこれが自己主張の苦手なか弱い女の子とかだったら自分の意思とは関係なくなし崩し的に交際するしかなくなっていたかもしれません。
それに、食事に誘われた時点で私は入社後一か月経っていませんでした。仕事上の関わりも会話の機会もろくにない以上、Iさんが私に狙いをつけたのは恐らく年齢や見た目といった要素でしかないわけです。当時の私はMOREとかWithに掲載されているような比較的女性らしいファッションを好んでいて、ひざ丈のフレアスカートやシフォン素材のブラウスを愛用し髪をハニーブラウンに染めたりまつエクやセルフネイルにも興味を持っていました(今は少年みたいな見た目をしています)。お互いに交流していく中で好きになっていったけどきっかけが掴めなくて……とかならわかるのですが、いきなり追い込み漁を始めたことには少なからず私も腹を立てていました。
なので私が相手のことをよく知ろうともせずに罠を仕掛けて交際を断ったとしても、それはお互い様だと思っていました。
本当に好きなら、まず直接本人がきたらどうなんだという話です。
告白タイム
宴もたけなわになってきたところで、Iさんがプレゼントにギフトボックスに入ったプリザーブドフラワーを取り出し告白タイムが始まりました。「まあ、そんな風に思われていたなんて知らなかったわ」なんて態度をとりつつ、私も用意してきたセリフを繰り出しました。
「今日は、お話できて楽しかったです。Iさんもすごく素敵な方だってわかりましたし……でも、私情緒不安定でメンタルクリニックに通っていて今とても恋愛ができる自信はないんですよね。それにアニメとかゲームが好きなオタクなのでIさんとは趣味が合わないと思いますよ? Iさんはアニメとか見ないですよね^^」
私の見る限り、Iさんは自分の恋愛事に他人を巻き込めるくらい人脈の広い陽キャです。
Iさんをやんわりと振っても「この子はIさんの良さを分かっていないだけ」と思われて再び周囲の人間を巻き込んだ追い込み漁を仕掛けられては意味がありません。逆に「あなたみたいな人は好みじゃない」などと言ってこっぴどくIさんを振ろうものなら、それこそIさんやその仲間の人たちに印象が良くないし今後の仕事にも差し支えるかもしれません。
Iさんからはオタクの匂いは感じ取れなかったので、メンヘラとオタクの二枚看板の破壊力を盾に「今私は恋愛できる自信がないからそっとしておいてほしいの」と伝えることで向こうから手を引きやすくするのがベストな選択と判断しました。
Iさんが私の見た目からおしゃれで清純そうな女性像を勝手に描いているのだとすれば、まずそのイメージを破壊することが効果的だと考えたのです。
今でこそ普段アニメに関心のない人間もエヴァンゲリオンの映画を見たり、芸能人がアニメ好きを公言するなどオタクフレンドリーな時代になりましたが、今から10年前のアニメオタクに人権はありませんでした。職場バレしたらキモイ人扱いされたあげく村八分に遭い、本気で転職を考えるような時代だったんです(yahoo知恵袋にもそういう相談があふれていました)。
オタクをカミングアウトすることにはリスクを伴いましたが、幸い一人で黙々とやればいいような仕事内容でしたし今の状態よりは腫物に触るように遠巻きに見られるほうがまだいいと覚悟しました。
Iさんの反応
捨て身ではありましたが我ながらゴール隅を狙った絶妙なシュートが決まったと思ったら、Iさんが間髪入れずにこう言いました。
「じゃあ、僕もアニメの事これから詳しくなりたいので勉強しますね」
これから詳しくなりたいので勉強しますね????
この人、何言ってるの?????
「何かお勧めの作品あったら教えてください」とか言いながらIさんは会話を続けました。何を勧めたかは忘れましたが、なんか勧めた気がします。予想もしていない方向から矢が返ってきたので、思わず防御が遅れてしまいました。ダメだ、負けちゃいけない。
「でも、私精神的に参ってて不安定っていうか、今は治療に専念したくて……」
「大変な時ですよね……僕も支えられるように協力しますから二人で頑張りましょう」
「今はどんな治療をしているんですか?」と聞かれたので「えっと……今は投薬と運動してて……」と答えてしまいましたがどうしよう、この人どこにボール投げても打ち返してくる。いつの間にか小学校時代にバドミントンをやっていたことまで聞き出されていました。
「僕、いい公園知ってるのでそこでバドミントンしましょう。次いつ空いてますか?」
そう言うとIさんはさっき告白タイムがあったことも華麗にスルーしてスケジュールを確認し始めました。「はい」とも「いいえ」とも言っていないのに「二人で頑張る」がすでに既定路線になっていることに気づいたのはIさんと別れて自宅への帰路を歩いている途中でした。
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
私はきつねにつままれたような気持で帰り道を歩いていました。
「引け。ドン引きしてしまえ」と思いながらメンタルヘルスとアニメオタクをカミングアウトして終止符を打ったはずが、いつのまにか次回のデートのアポを取られていたことに理解が追いついていませんでした。ジョジョの『あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!』のミームが頭をよぎりポルナレフ状態になりました。
Iさんが営業職だったことを思い出したのはさらに翌日出社してからでした。
次回に続きます。
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(ブログの読者がどこまでネタについてこれているのか自信がありません…)
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
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3500万円が貯まるまで⑱「恋人ができました」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は一つ前の派遣先での嫌な記憶を克服するために様々なメンタル治療方法を試したと言うところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで⑰「職場の嫌な記憶から立ち直るためにしたこと5つ」
恋人ができました
ところで書いていませんでしたが、新卒の会社で働いていた時に付き合っていた恋人とは上京の時に別れてしまっていました。その後、社会復帰の転機を与えてくれた人(3500万円が貯まるまで⑤「仕事が楽しいなんて思ったことない」参照)に片思いをしていた時もありましたが、私もすぐに引っ越してしまったので付き合うようなことはなかったです。そもそも年齢もかなり離れていましたしね。正確なことは覚えていませんが、今ごろ60歳を超えておられてもおかしくない年齢だったと思います。なぜ急にこんな話をするのかと言うと……ここで恋人ができるからですね
「金ならあるんだ。金なら」→破局
彼と初めて出会った時はお互いにいち会社員同士でしたが、私よりももっと前に独立・起業して現在は多額の不労所得を得ています。とっくにセミリタイアでもアーリーリタイアでも可能な収入額があるにも関わらず「貧乏くさいのは嫌だ」と言って働きつづけているような人です。
最近は会うと全身をグッチとクロムハーツでコーティングしていて、口癖は「金ならあるんだ。金なら」。愚痴を言いながらも毎日往復4時間の通勤をして自分の会社とは別の法人の役員収入も得ながら貯蓄には回さず毎月100万円の生活費を使っていると言ったらセミリタイア民は理解不能だと思いますが安心して下さい。私も理解できていません。
ときどき予想もつかない価値観が飛び出してくることがあって、ぽかーんとしてしまいます。向こうから見たら私の価値観のほうがぽかーんなんでしょうけど。現在、月10万円で貧乏セミリタイア生活をしているような私とは金銭感覚が合うはずもなく、同棲をきっかけに一年足らずで破局することになります。
(過去記事でもおなじみのこの方です)
関連リンク:靴下の穴を縫ったら元カレにキレられた話
片や、靴下に空いた穴を縫って履く女VS買うかどうか悩む前に購入ボタンを押している男です。
破局して当然なのですが、付き合う前は相手の金銭感覚とかわかんないですからね。(口癖はともかく)品があって身だしなみに気を遣うし人当たりがいいし、決して悪い人じゃないんですけども。
しかしながら、私の年収が上がっていくきっかけを作った人でもありストーリー上欠くことのできない登場人物なので紹介することにします。では、話を元に戻しましょう。
外堀から埋められていくスタイル
その派遣先はいわゆるホワイト企業というやつでみなさんとても親切にしてくれたのですが、一つだけ「ん?」と思うことがありました。
なぜか周囲の人がやたらとある人物の話を振ってくるんです。仮にIさんとしましょう。
「もう仕事慣れた? わかんないところがあったら何でも聞いてね^^……あ、Iさんとはもう話した?」
「Iさんって〇〇なところもあって素敵なんだよ」
「ねえねえ、ヤモリちゃん的にはIさんってあり?なし?」
職場の人が不自然なくらいに異口同音でIさんのことを薦めてくるんです。でも、私とIさんは特に仕事で関わりがあるわけでもありませんし、「そういえば一回話したかも?」くらいで特別なことは何もなかったように思います。
後から直接本人に聞いて確かめたのですが、やはりオフィスのみんなに「付き合いたいから協力してくれ」と触れ回っていたらしいです。外堀から埋められていたんですね。
ですが、当時の私はそれがありがた迷惑でした。
前回までの記事にも書いているように、フラッシュバックのこともあって全然それどころじゃないわけですよ。その時は自分のことだけで精いっぱいで恋愛をして他人のことを考える余裕なんてあるわけありません。「頼むから私のことは放っておいてくれ」と思っていました。
それに最初の派遣先で20代の若い女性派遣社員をつまみ食いしにくる男性社員というものを複数例見てしまっていたこともあって、私は獲物にはなるまいと警戒心がありました。
しかし、派遣先の人間関係を悪くしたくない手前この手の話題を邪険にすることもできず、考えあぐねた私はとあるきっかけをもとに元凶のIさんに直接釘を刺すことにしました。
その日、満を持して食事に誘ってきたIさんからの社内メールにすぐさまこう返信しました。
「わあー、楽しみです。私もお話ししたいと思ってました^^」
次回に続きます。
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3500万円が貯まるまで⑰「職場の嫌な記憶から立ち直るためにしたこと5つ」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は職場での嫌な思い出がフラッシュバックして仕事が思うようにできなくなり、退職を申し出るも派遣先からはサポートすると言われて復帰することにしたところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
メンタル治療をしながらの就業
前回の記事で起死回生の機会を得た私はその後も通勤を続けることができましたが、やはり順風満帆とはいきませんでした。
なにしろフラッシュバックや突然の動悸は相変わらずでしたし、帰り道では毎日のように「あの行動がよくなかったんじゃないか」「この言動が変に思われたんじゃないか」と一人反省会を始めては自分を卑下して落ち込んでいました。
一方で、いくつかやってみようと始めたこともありました。
せっかくなので一個づつ紹介していきますね。同じ症状で悩んでいる人がいれば参考にしてみてください。
職場の嫌な記憶から立ち直るためにしたこと5つ
- メンタルクリニックの受診
- カフェイン断ち
- 睡眠導入剤の利用
- 運動習慣を身に着ける
- その日頑張ることを3つ決める
メンタルクリニックの受診
たしかこの時初めてメンタルクリニックを受診したように思います。
それまでの私にはメンタルクリニックに行くことは恥ずかしいという気持ちがあったのですが、この期に及んでそんなことは言っていられないので思い切って門を叩きました(最近は行っていないですが、何かあれば風邪薬もらいに行くぐらいの感覚で普通に利用できるようになりました)。
メンタルクリニックや心療内科というとカウンセリングを想像する人が多いかもしれませんが、基本的には薬による対症療法がメインです。自律神経の興奮を抑える薬(漢方もあります)を出してもらったり、眠れない時は睡眠導入剤を処方してもらったりですね。私が通院していたところがそうだっただけかもしれませんが、これと言った病名はつけずに治療にあたる場合が多かったです。
カウンセリングも希望すれば受けられますが非常にお高いです。1時間1万円前後はかかると思ってください。加入していた健康保険に年5回までカウンセリングを受けられるオプションがついていたので利用したことがありますが、相談できる人がいるという点ではよかったです。ただ、やっぱりお金が続かないんですよね……。
カフェイン断ち
病院を受診してカフェインの取りすぎを指摘されました。
私の症状として緊張感からくる突然の動悸や不眠があったのですが、自律神経の乱れを疑われまして栄養ドリンクやコーヒーの摂取量を聞かれました。
実は私はかなりのお茶好きでして、お気に入りのティーポットで1日あたり5~10杯程度の紅茶を入れては日常的に飲んでいたのですが、お医者様に「飲みすぎ」と言われました💦 その後、カフェインの入っていないルイボスティーやコーン茶に切り替えてカフェイン断ちをしました。今は眠気覚ましでコーヒーや紅茶を飲むこともありますが、1日当たりの摂取量は控えめにしています。1日だけ抜いてもあまり意味はないので、数か月単位でカフェインを身体から抜いてみると改善効果が感じられました。
睡眠導入剤の利用
この頃辛かったことの一つに「夜眠れない」がありました。身体は疲れているはずなのに寝ようと思うと緊張で眠れず、夜が明けてきた頃にもう起きなきゃと思った途端猛烈な眠気が襲ってきます。
眠れない間は大抵悪いことを想像してしまって心身が疲弊してしまいます。疲れも取れないしげっそりしてフラフラになりながら仕事にいくのを繰り返していてはよくなるものもよくならないです。
眠れないと「眠れない」こと自体が新たな悩みの種にもなってしまうので、薬の力を借りて眠れるならそれに越したことはないと思います。
私は睡眠薬についても最初はネガティブなイメージを持っていてできるなら使いたくないと思っていましたが、一度その効果を知ってしまうと「眠れるというだけでこんなに身体が楽になるのか」と感動しきりでした。長期の服用や処方箋を守らない過剰な使い方をしない限り依存性の心配はないと聞いています。副作用が気になるなら、数種類の薬を試して相性をみることもできます。
運動習慣を身に着ける
自律神経も肉体の一部なので、健康な身体作りが物を言います。
ジョギングでもウォーキングでもいいので、運動を日常に取り入れることはとても重要です。そこまで体力が回復していないなら、朝窓を開けて日光に当たるところから始めてみてください。日光に当たると体内でメラトニンのリズムが作られるので、夜も眠れるようになります。
今、昼夜逆転してしまっている私の状態はあまりよくないと自覚しています……(^^;
どこかのタイミングで直さねば😓
その日頑張ることを3つ決める
前日の夜眠る前に、明日頑張りたいことを3つ決めて手帳に書き込んでいました。
ポイントは、頑張ったら絶対にできそうなハードルの低さに設定することです。例えば、「朝、自分から挨拶をする」「エクセルのショートカットを1つ覚える」「遅刻をしない」などです。
これは頑張ること自体が目的ではなく、一人反省会をやめて自己肯定感を上げるために始めたことです。「反省」というといいことのように聞こえますが、実際は自分に対するダメだしなので1日5分以上の反省はお勧めしません。とはいえ思っていてもなかなか実行に移すことは難しいので、「事前に決めた3つのことができなかった時だけ反省する。それ以外のことではダメ出ししない。後出しじゃんけんをするのは卑怯なこと」と自分でルールを決めていました。自分に対して「卑怯なことはよくない!」と納得させたことで何かミスをしてしまった時も過度の反省会を防ぐことができるようになりました。
ちなみに、それじゃいつまでたってもミスが減らないだろ!と思った方は反省ではなく改善と捉えて取り組むようにしてください。何がダメだったかではなく、「次同じことがあった時にはこうしたい」とやりたいことベースで考えるようにします。
必要以上に自分を責めたところで得られるものは特にありませんから、損な習慣からは脱却していくことをオススメします。
まとめ
私が思うにメンタルの治療は相性のいい医者、治療法、薬と出会うまでが長いです。
薬だって相性によっては副作用ばかりで効き目が感じられないこともあるからです。お医者様も魔法使いではないので初診で最適な治療法がぱっと提示できるわけではありませんし、人間同士ですからどうしても信頼関係を築けないこともあります。でも、それはしょうがないことです。
病院に行きさえすれば、薬を飲みさえすれば、あとは医者が勝手に直してくれると思っていると、逆に治療が進まないことに不安感や不信感を抱くことになります。あくまでも症状をコントロールできるようになるのは自分で、お医者様や薬にはそのガイド役になってもらうんだという気持ちで根気強く取り組むのがいいと思います。
そのためにも心身ともにズタボロでどうしようもなくなってからではなく、「ちょっとしんどくなりそうかも」くらいの段階から病院探しをしておくのがいいように思います(治療するのにもお金と体力と時間がいるのでね……)。
なんか普通の記事みたいになってしまいしたが、次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
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3500万円が貯まるまで⑯「思いがけない返事」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験のIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は前の職場での辛い記憶を思い出して、ついに文字も読めないほど追い詰められた私が職場を逃げるように早退したところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで⑮「前の職場での辛い記憶がフラッシュバックする」
なにもかも自分が悪かったように感じられる
前々回「職歴に2度目の✖をつけたくなかった」の記事で、私はSさんやリーダーに対して同情の余地はないと書きましたが、そう思えるようになったのは実はかなり後になってからです。退職した直後はむしろ、「何もかも自分が悪かったのではないか?」とさえ思っていました。
私が内向的な性格で人付き合いが苦手だからーー。
私のメンタルが弱くて我慢が効かないからーー。
私が人として欠陥があるからーー。
無職から社会復帰して一度は取り戻したはずの自信をまた粉々にするほどには、前職での出来事は十分にストレスフルだったようです。嘘の体調不良で逃げ出してきた私は家に戻ってきてからも自分を否定することばかり考えて泣いていました。
こういう時、私はどうも自分が弱っていることを他人に知られたくないと思う傾向があるようです。幼少期の家庭環境から人に心を許すことが難しかった私は、自分が弱っていることを知られてしまったらもっと攻撃されてしまうと思って、生命の危機を感じるようになっていました。もっと人を頼っていいんだ、助けを求めていいんだと教えられたのは実家を出て最初の恋人と付き合ってからですが、わかっていればそれができるというわけでもないようです。本能と深く結びついた行動様式はその後も私を深く支配していました。
家に戻ったころには文字が読めない症状は出なくなっていましたが、解決策がない以上「また読めなくなるかもしれない」と考えてしまってそのたびに涙が滲みます。どうにかしようと頭を働かせたけれど、何も思い浮かびません。
もう、この辺が潮時かもしれない。
そんなことを考えました。
思えば、人生をドロップアウトする覚悟で最初の会社を辞めてから思いがけない出会いがあって、立ち直らないまでももう少し命日を遅らせてみようという想いでサイコロを振り続けてきましたが、いよいよそれが振れなくなったのだと解釈しました。
もう、十分頑張った。ここが終着地点だってわかったんだから、それでいいじゃない。
そう自分を納得させた私は、呼吸を整えると派遣会社のコーディネーター宛てに電話を掛けました。
覚悟が決まった分、さっきよりかは幾分落ち着いた気持ちで「仕事を辞めさせて欲しい」旨話しました。理由を隠す必要性も感じなくなったので、ありのまま話しました。前職でのことを思い出してしまって仕事を思うように進めることができず、時給をいただいてもそれに見合うものを返せなくなったと。このまま仕事をし続けるのは困難なので辞めたいと思いますと。
思いがけない返事
泣き疲れたのもあってか、電話をかけたあとはすっきりしていました。
思えば随分いろんな事ができたものだと、自分を褒めてやりたい気持ちにもなりました。
無職から一念発起して資格を取って、上京して派遣で働き始めて……2年弱くらいでしょうか? やれるところまではやったと思ったらあまり悔しい気持ちも湧いてこなかった気がします。
その後、どのくらい時間をおいてかは忘れてしまったのですが、派遣会社からまた連絡がありました。
「先方のご担当者の方とお話ししたのですが、事情をくみ取ったうえで会社としてもできるサポートはするからヤモリさんにその気さえあればこのまま仕事を続けて欲しいと言っています。どうしますか?」
思いもしない返事でした。
私は職場に復帰後、自分の指示役でもある女性社員の方になぜこんなにまでしてくれるのか?と聞いてみたことがあります。
誰でも辛いことがあってそれをかかえてしまうのはしょうがないことだと言ったうえで、少し恥ずかしそうにしながらこう答えてくれました。
「昔、彼氏が精神を病んでしまって、自分も助けになりたくて心理学のことを勉強したり資格を取ったりしたんです。でも、結局支えきることができないまま別れてしまったんです」
「で、いつ年収上がるの?」と思ったそこのあなた
この時の時給は正確に覚えていませんが確か1600円くらいだったと思います。上京して以来あまり年収は変わっていませんね。貯金も大して増えませんでした。
しかしながら、派遣社員として入ったこの会社で私は派遣社員→契約社員→正社員を経てセミリタイアし、現在は業務委託のクライアントとしてお世話になるなど大変縁が深い関係となっていきます。
実際に年収が上がっていくまでにはもう少しお話を進める必要がありますが、引き続き昔話にお付き合いいただければ幸いです。
次回に続きます。
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次回:3500万円が貯まるまで⑰「職場の嫌な記憶から立ち直るためにしたこと5つ」
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3500万円が貯まるまで⑮「前の職場での辛い記憶がフラッシュバックする」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験のIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は魔王Sさんのいじめに遭うも3か月未満で辞めた職歴をつけたくなくて無駄な努力をしたあげく結局退職したところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで⑭「職歴に2度目の✖をつけたくなかった」
新しい派遣先との顔合わせ
退職後すぐに新しい派遣先を紹介してもらい、顔合わせになりました。
スキルのことなどを聞かれつつ、前の派遣先を3か月足らずで辞めた理由について聞かれます。
「来た」と思いました。無職だった期間についてはもうあまり聞かれませんでしたが、やはりここは直近なので避けては通れないようです。
私はできるだけ部分的に話をするようにしました。詳しいことを説明しようとするとどうしてもSさんやリーダーに対する非難が混じってしまいそうで、そういう話は例え事実であったとしても雇う側から見たら印象が良くないと思ったからです。
「リーダー社員→先輩派遣社員→実際に作業するメンバーの指示系統でしたが、リーダー社員と先輩派遣社員の間で指示が食い違ってしまうためやりにくさを感じていました。なので、できれば仕事の指示を出す人と間に誰も挟まないで直接やり取りできる仕事に変えたいと思って退職しました」と答えました。
この時、顔合わせに同席したのは派遣予定先の女性社員とその上長です。
女性社員はさらにつっこんで聞いてきました。
「具体的にどんなところがやりづらかったんですか?」
私は尋問されているような気分で、息を吸い込んでから答えました。
キーワードのチョイスが違うと言われて何度もやり直しになったこと、具体的なキーワードを先輩派遣社員に選んでもらって作業したけどリーダーからそれも違うと言われたこと、文字数を巡って「短く」と「長く」で正反対の指示を受けたことなどです。
私はここで言葉を切りましたが、女性社員はまだ何か聞きたそうでした。ここで同じく同席していた派遣会社のコーディネーターさんが初めて口をはさみ助け舟を出しました。
「ヤモリさんの前の職場では仕事の仕方にあいまいなところがあって、3人いた派遣社員が短期間に次々に辞めることになりました。これについては私共のサポートが至らなかったところで誠に申し訳なく思っています。ですが、そんな状況でもヤモリさんが一番最後まで残って働いてくれていました。もうそんなことがないように、今度こそ責任をもって私がサポートしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言って、深々と頭を下げたのです。
コーディネーターさんがこのようなフォローを入れてくれたことは大変にありがたかったのですが、当時の私には気持ちの余裕がなく前の職場のことを思い出すと吐き気がして気持ちが悪くなっていました。ずっと硬い表情をしていたと思います。
上長と思われる男性社員が、
「そうだよねー。クールな感じ、とかポップな感じ、とか難しいもんね~」と朗らかに言って場を和ませ、顔合わせは終了しました。
採用が決まるも、前の職場の辛い記憶からフラッシュバックを起こすようになり……
その後、無事に採用が決まったとコーディネーターさんから連絡がありました。
私はフォローのお礼を言って電話を切り、まもなくして新しい職場での出社日を迎えました。
緊張しましたが無事に挨拶を済ませ仕事の引継ぎに入りました。希望通り指示者と私の間に誰かを挟むようなことはなく、顔合わせの時にいた女性社員から直接レクチャーを受けました。美人で、優しくて、頭のいい人だと思いました。説明も丁寧です。
でも、私はこの頃頻繁にフラッシュバックを起こすようになっていました。
前の職場での嫌な場面だけじゃなく、新卒の時の会社で叱られ続けていた時のことまでとめどなく思い出しては心臓がドキドキして息がしにくくなりました。
こんなことは早く忘れよう、思い出さないようにしようと思ってもそれは幾度となく突然襲ってきました。そのうち思い出していない時でも「また思い出したらどうしよう」と思ってドキドキするようになりました。そうなるとしばらくの間仕事をする手がとまり、深呼吸して指の震えが収まるのを待つしかありませんでした。
やがてもっと悪いことが起こりました。
朝出社してきて、メールをチェックして仕事の内容を読み取ろうとしたのですがどうしても文字が読めないんです。
お疲れ様です。〇〇です。
***********、
*****。
一行目を読んで二行目に移ったはずなのに、また一行目を読んでいました。
あれ?と思ってもう一度読もうとするのですが、どうしても2行目以降を読むことができません。
その後、1時間に渡り何度も何度も同じメールを読もうとしましたが、結局読むことができませんでした。
自分に何が起こっているのかわかりませんでしたが、「まずい」とか「やばい」とかいろんな焦りの感情はすぐにやってきました。その日やるはずの仕事はまったく進んでいません。
私は今の自分の状態が周囲にバレるのが怖くなって、「風邪を引いたみたいで熱っぽい」と噓を言って逃げるように早退しました。
続きます。
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3500万円が貯まるまで⑭「職歴に2度目の✖をつけたくなかった」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって転職を繰り返し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回はリーダーの社員と先輩派遣社員Sさんの指示が食い違うストレス状態の中、派遣社員が一人また一人と辞めていくのを笑いながら見ているSさんの次の標的は私で……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで⑬「そして、私だけが残された」
職歴に2度目の✖をつけたくなかった
Sさんと風船ガム先輩のクスクス笑いの中、なにかとてつもなく悪いことが起こっていることに鈍感な私も十分すぎるほど気が付いていました。その標的が最後に残った自分に向かっているということにも。
しかし、この時私は愚かにも誤った選択をすることになります。
辞めたくない、と思ってしまったんです。
前回の職場で「自分から辞めない」誓いを立てたからじゃありません(そもそも職場が違います)。ただ単に、職歴に3か月未満で辞めた経歴を載せたくなかったからです。
想像してみてください。
今この仕事を辞めてしまったら、その後の職務経歴書にはこう並ぶことになるんです。
- 新卒で入った会社を3年未満で退職
- 2年間無職
- 1年間派遣社員満了
- 3か月未満で派遣先を退職 ←NEW!
周りの目が怖い恐怖に押しつぶされそうになりながらやっとの思いで無職を脱して作った1年間の職歴が、水の泡になってしまうと感じました。ペケが一回だけなら”たまたま”仕事が合わなかったと言い訳できる。でも、2回も挫折したら”私が”そういう人間だということになってしまう。中途半端な職歴が増えれば増えるほど、その履歴書が私という人間を書き換えていってしまうのではないかという錯覚が当時の私にはあって、それは想像するだけで怖いことでした。次の転職先でそう受け止められてしまうのと同時に、自分自身を正当化することもできなくなるような気がして、それだけはどうしても嫌だったんです。
焦った私はどうにかSさんとの仲を取り戻そうとランチに誘ったり、仕事中もたくさん話しかけたり、どうにかこの事態を乗り越えようとあがきました。すでに結論から申し上げているのでお分かりかと思いますが、これらは無駄な努力でした。雑談どころか仕事に必要な質問をしても、
「私に聞いてもまたやり直しになるから聞かないほうがいいんじゃないですか?」
もはやSさんは態度を隠そうともしませんでした。
社員のリーダーも何かと理由をつけて席に返ってこない日が増えた気がします。崩壊は秒読み状態でした。
パンドラの箱(最後に希望が残らないタイプ)
やがて、その日はやってきました。
私はまだSさんに話しかけるのをやめていませんでした。そしてSさんが何か言ったのですが、実はこの時具体的にどんな会話をしたかどうしても思い出せません。その他の部分は音声と映像付きで思い出せるのに、ここだけ記憶が白紙というか該当のファイルが存在していません。多分、私の記憶を統括する脳の偉い部分が、「それはパンドラの箱だから開けたらアカン。最後に希望が残らないタイプの奴だから」と警告を発してくれているのだと思うので、このままそっと閉じておこうと思います😅
ただ、これによって私の顔面もあの日見たベテランさんのように血の気が引いて能面のようになったことは記憶しています。怒りに震えてるという体験をしていたように思います。
その後、私はすぐにEメールで不在のリーダーにこう送りました。
「今日は何時に戻られますか?可能な限り早く辞めたいので、今日中にお話させてください」
仕事を辞めた過ぎて奇行に走った私
その後、リーダー社員と風船ガム先輩の上長でもある先輩社員さんとの3人で面談を行いました。一応退職したい理由としてこれまでの顛末を話しましたが、そんなことはもうどうでもいいことでとにかく早く辞めたかったです。リーダーは当然知っている話ですし、先輩社員さんに対して主に説明する形でした。すでにある程度の話は聞いていると先輩社員さんは言いました。そして、いつ辞めたいのかだけ聞きました。
私は「必要ならその期間は出勤しますが、可能な限り1分1秒でも早く辞めたいです。なのでそちらから期日をおっしゃってください」と答えて、結局一週間後に契約終了することになりました。
その日以降、私ももうなにも言わずただ淡々と事務処理をこなしました。
面談の時に承諾を取って、Sさんからの指示はもう受けず毎日のルーティンワークだけをこなしました。すぐにやることがなくなりましたが、開き直って自習時間にしました。お互いに話すこともありません。
で、一週間後退職日を迎えるのですが、この時も私はよくわからない行動に出ます。
今でも何でそんなことしたのか全然わからないのですが、最終日に退職菓子を用意して配ってました。 ここまできたらもういらないでしょ!と今なら思うんですけど、1週間も「辞めたい」と思い続けたのでいざその時を迎えたら嬉しすぎてわけわかんなくなっちゃったんでしょうねw
にっこにこの笑顔でお菓子を配る私を同じフロアの人も風船ガム先輩もリーダーもみんな奇妙なものを見る目で見てましたwwww
今、振り返ってみて自分でも割と怖い光景だったなーと思います。
もちろん、Sさんのところにも配りに行きました。
「短い間でしたがお世話になりました。これよかったら召し上がってください」とふつーの退職のような挨拶をしました。嫌味っぽい口調でもなくて、どちらかというと「ようやく退職出来る!」という喜びで本当ににこやかでした。
Sさんは言いました。
「私、もう人を教えないことになったんですよ」
私は特に何か思うこともなくて、「あ、そうなんですか?」とだけ返しました。正直辞められて嬉しい以外の事は考えてなかったのだけど、もしかしたら「あなたのせいで私はサブリーダーになれなくなったのよ!」という意味で言われてたのかも?と10年以上経った今になって気づきましたね。
次はリーダーです。
「お世話になりました。次の人はもう決まったんですか?」
「いや、もう新しい人は入れないことになったから」
どうやら人事?かどこかが3か月足らずの間に相次いで派遣社員が辞めたことを受け止めてそのような措置を講じたというような話を聞きました。これも当時は気づきませんでしたが「お前のせいで俺は出世コースを(以下略)」。
……今になって思えば、サブリーダーとして期待を掛けられて意気込んでいたSさんや、始めて自分のアシスタント付きチームをもったリーダーがその結末だけ見ればちょっとかわいそうだった気もします。でも、やって良いことと悪いことはありますので私から差し上げる同情の余地はないです。
このエピソードはここまでで終わりですが、無理にでも退職を回避しようとして負ったダメージはこの先も想像以上に私を苦しめ続けることになります。
次回に続きます。
「おもしろい」「続きが気になる」「これ本当にあった話?作り話じゃないの?」と思ったら、ポチお願いします。
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次回:3500万円が貯まるまで⑮「前の職場での辛い記憶がフラッシュバックする」
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