3500万円が貯まるまで㉔「納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は担当することになったのは嘘の更新情報とクレーム発生装置の温床となる機能に関わる仕事で……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
真面目に仕事するほど損をする
新しい派遣先での仕事はサイトに更新される店舗オーナーからの入稿文章をチェックすること。けれども、入稿されるものの大半は何か月も同じ文章です。毎日2~3時間を費やして語尾の一文字を変えただけの文章をチェックし続けるという生産性の無さは、かつての仕事で感じた穴を掘ってはまた埋める拷問に近い辛さがありました(参照:3500万円が貯まるまで⑫「まるで拷問のよう」)。20代の貴重な時間が特に何の価値も生み出さない作業にあてられているのではないかと考えると行き場のない焦燥感を感じたのを覚えています。
一方で、限りなくグレーに近い黒を責め続ける店舗オーナーのクレームもあります。規定に合わせて真面目にチェックしているからNGを出しているのに、その結果得られるものは営業担当からの嫌味と、クライアントに忖度して消費者の安全を無視したアウトプットという目の前の現実……これはかなり屈辱的なことでした。
営業からはもちろん上長からも空気を読むことを暗に要求されていると感じました。真面目に仕事に取り組もうとすればするほど回りから嫌われていく。この仕事を好きな人は私を含めて誰もいませんでした……。
納得いかない……イライラをぶつけてしまうことも
ですが、私はどうしても納得がいきませんでした。
わざわざ何時間もかけて文章をチェックするのは消費者の不利益になるようなことをサイトに載せないためです。普段、消費者のことを第一に考えたサービスづくりを事業理念に掲げていて、年に数回の研修でもそれを繰り返し確認しています。なのに、研修から戻ってきた午後には声の大きいクライアントに忖度して規定違反の文章をサイトに掲載しています。
「言っていることとやっていることが違いますよね?」
そう言って、募ったイライラを実際に上長や社員の人にぶつけてしまうこともありました。でも、これは間違いだったと思います。
私がイライラをぶつけたところで、ぶつけられた人がそれを解決できる何かを持っているわけではありません。ただ、私が鬱憤を晴らしたいという欲望が一瞬満たされるのと引き換えにやるせない思いを抱える人を増やすだけなら、それもまた生産性のない行いでした。
だけど、当時はまだそんなことに気が回るほど視野も広くなくて、自分を諫(いさ)めることもできませんでした。
異動先の引継ぎで感じた違和感の正体
そんな日々を過ごしていた数か月後、別の部署へ異動することになりました。
といっても同じ事業部内の新規サービス立ち上げ的なチームへの異動だったので、仕事内容は変わりますが所属そのものはあまり変わらずデスクも同じ島の目と鼻の先です。
そこは5人ほどのチームで、統括するリーダー役の男性社員1名、営業の男性社員が2名、営業事務と帳簿などを管理する庶務的な役割の女性社員が2名いました。このうち庶務的な役割をしていた人が結婚して寿退社することになり、その引継ぎで私が入ることになりました。
引継いだのはエクセルで作られた予算管理シートの更新など帳票類の管理ですが、予算額自体はリーダー社員からトップダウンで降りくくる指示をそのまま反映するので新人の私でも難なくできそうでした。異動の結果、文章チェックと言う嫌いな仕事から逃れられて少なからずほっとしていた部分がなかったと言ったら噓になります。
引継ぎ元の女性社員とは顔見知りだったので、引継ぎも雑談を交えながら和やかに進んでいきました。
「寿退社さんっ。聞きましたよ~、次期社長夫人になられるそうですね!お相手の方ってどんな人なんですか?😊」
「いやいや、小さな自社工場の経営だし私も事務員として働く身だよ~。次期社長っていっても普通のおじさんだし、全然優雅な生活じゃないからw ヤモリちゃんだってIさんとそろそろそういう話してるんじゃないの?」
「いや~……うちはもうそういう関係じゃなくなっているのでないと思います😅」
「またまたあ」
なんて話をしながらも、寿退社さんは嬉しそうに顔をほころばせていました。まさに幸せいっぱいの新婚さんという感じでこちらまでほっこりしてきます。
その寿退社さんの顔が急に神妙になった気がしました。
「ヤモリちゃんはIさんがいるから大丈夫だと思うけど……なにか困ったことがあったら周りに相談してね……」
「……? はい」
何か含みがあるような言い方でしたが、セリフだけ見れば引継ぎの時の決まり文句のようでしたしこの時は特に気にも留めていませんでした。
その意味するところを知ったのは、引継ぎを終えて寿退社さんもいなくなった後の最初の定例会議です。
ガンッ
……っと盛大な音を立ててリーダー社員は机を殴りつけました。
会議室という密室の中で起こった出来事に私が感じていたのは混乱と戦慄でした。
次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
前回:3500万円が貯まるまで㉕「パワハラに猛抗議するがクビを言い渡される」
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