3500万円が貯まるまで㉘「働け、ニート。追い詰められる無職」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって未経験でIT業界に転職し、15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は国民的オンラインゲームドラクエ10にハマったことを切っ掛けに無気力を脱したのはいいものの今度はゲームが辞められなくなり……というところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
働け、ニート。追い詰められる無職
「おい、クソチビ。いい加減にしろよな💢」
これは深夜0時を超えてもドラクエを続けたかった私がテレビの音量を0にしてゲームをしていた時、急にすぱーんとリビングの引き戸が開いて現れたルームメイトで元恋人のIさんに言われたセリフです。
(は? このおっさん、今クソチビって言った?)
出会った頃の甲斐甲斐しさは一体どこへ行ったのでしょう? 釣った魚にエサをやらないどころか今やクソチビ呼ばわりです。他にも、いろいろ言われましたね。
「邪魔だ。ねずみ色(グレーのスウェットを一日中着ていたので)」
「そのゲームソフト俺が買ってきたやつだから、返してくれない?」
「働け、ニート」
現在は気ままな一人暮らしセミリタイアなので自由を好きなだけ謳歌できていますが、同居人がいるとたとえ生活費を折半にしていてもこの言われようです。「セミリタイアしたけど家族からのプレッシャーが……」という話を聞くと大いに共感してしまいます。
無気力状態から意識を取り戻したとはいえもう少し英気を養いたかった……もといドラクエがしたくて仕方が無かった私は一計を案じます。
かくなるうえは、Iさんをオンラインゲームの沼に沈めることにしました。
※物騒な意味ではありません。
かくなるうえは……沼に沈めよう
もともとオタク用語で特定のジャンルや作品にハマることを「沼落ちする」という表現があるのですが、そこから転じてまだその作品にハマっていない人をファンに仕立て上げることを「沼に沈める」と言うようです。このまま小言を言われ続けるのは嫌だと思った私は、なけなしの貯金の中から7万円を投じてIさんをドラクエXプレイヤーに育てることにしました。
「ゲームソフト返してって言ってたよね? 随分長く借りていたし、ただ返すだけじゃ悪いから利子として新品のWiiとテレビもつけとくね~^^」
そう言って半ば強引にリビングに2代目のWiiとテレビを持ち込んだ私を眉間にしわを寄せて見ていたIさんでしたが数週間後には、
「いい加減にしないと、Wiiたたき割るぞ💢」
|・ω・`)「今日はまだドラクエやらないの……?」
の状態まで変化させることに成功します。
具体的にIさんがどういう変遷を辿ってドラクエ沼に落ちていったのか、これはこれで思い出深くて面白いエピソードがたくさんあるのですが、ほぼゲームの話になってしまうのでここでは割愛します。
しかしながら、私がドラクエ以外のことをしていると向こうから誘いに来るようになった時は「この投資、勝ったな」と確信しました。
誤解しないでください!
誤解のないように言っておきたいのですが、私は普段から誰彼構わず他人様を沼に沈めるようなことをしているわけではありません。一つの作品やジャンルにハマると言うことはその人にとってかけがえのない時間やお金を投じることになるわけですから、いわば禁じ手として迂闊に手は出さないようにしてきました。それが時間泥棒のオンラインゲームともなればなおさらです。ですがあの時はわくわく快適ドラクエライフを守るための選択肢が限られており、致し方なかったのです(同棲解消して一人暮らしするには収入が不安だったし)。
もちろん、反省はしております。
もともとアウトドア派だった健全な30代男性が、手間とお金をかけてカスタマイズしたマウンテンバイクでサイクリングしたり、バイク仲間とツーリングに行ったり、キャンプ場でうぇいうぇいバーベキューした写真をフェイスブックに投稿したりすることもなく、平日は帰宅してから深夜まで休日は文字通り朝から晩まで自宅に引きこもってオンラインゲームするようになってしまったことに対して申し訳なさを感じていないと言ったら嘘になります。
ある天気の良い晴れた休日のことです。窓の外の日差しに目を奪われていたIさんが言いました。
「晴天の祝日だというのに朝から着替えもせず、外にも出かけない。デリバリーでファストフード頼んで、30代のいい若いもんが引きこもってオンラインゲーム三昧(ざんまい)か……ただれきってるな」
Iさんはかつてねずみ色と皮肉った私と同じスウェット姿のままコントローラーを握っている自分に気づいて自嘲するように吐き捨てました。無理もありません。その日は本当に外出しがいのありそうな小春日和だったので我に返ったのでしょう。彼の心情を慮って私は相槌を打ちました。
「そうだね……。もし、今目の前にドラクエにハマる前の自分に戻れるボタンがあったら、押す?」
Iさんは3秒ほどなんとも言えない苦悶の表情を浮かべた後、静かに言いました。
「……ソレハ嫌ダ」
反省はしています。反省はしていますが、後悔はしていません。
我ながらいい仕事したなと思います。
人生はどこで何が役に立つかわからない
一応メリットも書いておくと、当時のドラクエXは交流ツールでもありました。
ある日、仕事から帰ってきたIさんが「今から営業部長がグレン一丁目に来る。すぐ準備して!(※グレンはドラクエ内の街の名前)」と言うなりスーパー接待タイムに駆り出されたことも一度や二度ではありません。
営業部の社員やその上司である課長や部長までもがドラクエXプレイヤーだったらしく、よく私とIさんを含む4人パーティーを組んで一緒にストーリーを攻略したりレベル上げしながらおしゃべりしていました。「一体いつ寝てるんだろう?」と思うほどの廃プレイヤーの方もおりましたね……。
部長や課長はそこまで熱心にやっていたわけではなかったのですが、どちらも小学生のお子さんと一緒に遊んでいて「子供の攻略を手伝って欲しい」という文脈でご一緒することが多かったです。
次の目的地に向かう道中で、
「ヤモリちゃん(職場では苗字にちゃん付けで呼ばれてました)はA社やめた後、今何してるの?」
と聞かれることもありました。
つかの間の人生の夏休みを楽しんでいますとかなんとか言っていたら、
「ふうん。暇なら戻ってきたらいいのに」
「機会があったらお願いしますw」
という会話をすることもあって、その時は社交辞令で言ってくれているんだな~っと思っていました。この一年後くらいに実際に辞めた会社に出戻ることになるとはまさか予期していませんでしたね。人生、何がどこで影響してくるか本当にわからないものです。
次回に続きます。
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初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
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