3500万円が貯まるまで⑨「人生最大のやらかし。仕事で評価されたと思った矢先……」
ごきげんよう、おひとり様セミリタイア中のヤモリです。
この記事は私が借金270万円から始まって15年で3500万円を貯めてセミリタイアするまでを連載形式で書いています。前回は社会復帰後の派遣先で順風満帆のスタートを切りやりたかった仕事の兼務を持ちかけられたところまででした。その続きです。
初回:セミリタイア資金3500万円が貯まるまで①「マイナス270万円からのスタート」
うっかりタイプの私が仕事で評価された理由
ITヘルプデスクの仕事を手伝うと言っても、定期的に発生する入力作業を代行するだけでそれ自体はさほど頭を使うようなものではありません。マニュアルの通りにやればいいだけです。それでも重要な機能が詰まったシステムにログインするので、人一倍丁寧さや慎重さが求められる仕事でした。セキュリティ上の理由からアカウント数も絞らなければいけないので、誰にでもというわけにはいかないものです。
私はもともとうっかりミスや勘違いが多いタイプなのですが、新卒の時にしこたま怒られたこともあり対策を取っていました。終わったばかりのタスクをすぐに提出しないで時間をおいてから2回、3回と何度も確認してから出すようにしていたのです。業務量がまだ少ない時期だからこそできた手段だと思いますが、社員の人からはミスが少ないと評価されていたようです。
正直に言うと、仕事ぶりが認められたような気がしてすごく嬉しかったです。こうして兼務が始まりました。
そんなある日、事件は起こりました
その日、私はいつものように兼務の設定作業をつつがなく終了して電話の仕事に戻っていました。しかし、午後になってにわかに社内が騒がしくなったのです。隣島のIT部門の人が時々声を張り上げながらバタバタと走っていくのが見えました。
管理職の机の近くで何人かで集まって話している人もいます。そのうちの一人と目があった気がしました。その人は歩いてコールセンター内の社員のもとまでやってきて何かを話しています。やがて、二人そろって私のところまで来ました。
「今日、〇〇の作業やってたのってヤモリさん?」
ここまで来たらお分かりかと思いますが、私はミスを犯していました。本来入力しなければいけないフォームではなく、誤ってその3段下に設定内容を書き込んでいたことで大規模なシステム障害を引き起こしていました。
「セミリタイア資金3500万円が貯まるまで②「ぶっちゃけ転職です」」で、IT職は一度にサービス提供できる相手に上限がないと書きましたがその逆もまたしかりで、損害を与える時もあっという間に広がっていきます。
どんどん緊迫した空気を纏っていく社内にいて、私は何もできませんでした。話を聞かれた後、顔面蒼白で身体の震えを抑えていただけです。
私は、このことで誰からも責められませんでした。
復旧作業の後も社員は事故報告や再発防止策の対応に追われていましたが、派遣社員が設定を間違えただけで重大なシステム障害を引き起こすような作業フローになっていることに気づかなかった社員のミスと捉えられていたからです。
誤解を恐れずに言えば、今ならこの考え方が「ヒューマンエラー(人為的ミス)は起こるものだ」という前提にたった至極当然の考え方だと私自身も思います。ですが、この時は責任を取れず償うことさえ出来ないことが身を切るように痛かったです。社員の方は深夜まで対応に追われる中、私は邪魔にならないよう帰宅することしかできませんでした。
事故翌日の出社
翌日、水を吸ったように重たく感じる身体を引きずって朝から出社しました。
本当は泣き出したいし逃げ出したかったです。でも、「ここで泣くのはダメだ。絶対にそれだけは」と心に決めていたので唇の内側を嚙んで耐えました。
出社した私に派遣仲間が気づきました。みんな昨日の騒ぎをしっていて「大丈夫だった?」とメンタルを気遣ってくれます。社員の方も私を見つけて駆け寄ってきました。
「来てくれてよかった~! 今頃すごく気にしてるんじゃないかと思って心配してたんですよ。……大丈夫ですか?」
ぎこちないながらも
「大丈夫です。ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした」
と応えました。
「力が及ばないのは重々承知の上ですが、なにか私に出来ることは……」
「ううん、大丈夫。後のことは私たちに任せて気にしないでね。あ、できたら〇〇さんにお礼だけ言いにいってもらってもいいですか?」
社員の方が言うには、その人は最初にシステムの異変に気づいてくれた人で発見が早かったため最悪の事態は免れたのだと教えてくれました。昨日は本当なら親しい同期の送別会に行く予定だったのを障害対応のために行けず、予定をキャンセルして遅くまで復旧作業に当たってくれたのだと聞きました。
仕事を嫌いにならないで
私がその方を尋ねると、他の人と同じように「もう大丈夫だから気にしないように」と言ってくれました。無駄とはわかっていても、ダメもとで「私に何かできることはありませんか」と尋ねました。するとこんな返事が返ってきました。
「ヤモリさん、このことで誰かに責められましたか?」
「いいえ、そんなことは全くありません」明確に否定しました。
「だと思いました。みんなわかってるんだと思いますよ。ヤモリさんが誰かに言われなくても自分ですごく反省していること。だから、私からもお願いです。もし、今回のことで責任を感じて何かしたいと思ってくれているなら、このことがきっかけで今の仕事を嫌いにならないで下さい」
それは辞められたら困るとかそういうニュアンスじゃなくて、本当にそう願って言ってくれているんだなということが私にも伝わってきました。
私は「はい」と声を絞り出しました。
続きます。
あとがき
今振り返ってみても、この時の障害は洒落にならないレベルでヤバかったです。もし、あの時異変に気づかれることなく一晩が経過していたら……と考えると肝が冷えるどころかカチンコチンに凍り付いたのち粉砕されそうです。
ある意味、私にIT職の洗礼をもたらした事件でもあり、様々な意味で一生忘れられない出来事でした。
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